『春風のエトランゼ』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ
この作品について
北海道の小さな島にカフェを開こうとやってきた橋本天馬は、ある日、雨の中で野宿していた若い男・ストラトと出遭う。人付き合いが苦手なストラトに居場所を与えた天馬は、次第に彼との距離を縮めていく。互いに家族の呪縛から逃れてきた二人は、穏やかな日常の中で、他者と寄り添うことの意味を探りはじめる……。
紀伊カンナは『海辺のエトランゼ』で橋と駿の恋愛を描いた後、本作でその従弟である天馬を主人公に据えた。地方暮らしを舞台にしたBL作品は多いが、この作者が一線を画するのは、性的マイノリティであることが孤立の絶対条件ではない世界を描く点だ。天馬もストラトも、セクシュアリティそのものより、家族のあり方や自分の居場所の喪失に苦しんでいる。その傷を癒していくのは恋愛の熱量だけではなく、島の住人たちとの何気ない交流や、カフェに集う人々の穏やかな空気である。関係性の変化を追う緻密な心理描写と、季節の移ろいを感じさせる柔らかな背景画が、物語に奥行きを与えています。
この作品は、恋に落ちることより、誰かと生きていくことの難しさと尊さを描いています。続編という枠を超え、独立した一本の物語として読める傑作です。