『テンカウント』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ
この作品について
潔癖症を患う会社員・黒瀬陸は、触れることへの恐怖から他人との距離を保ち続けてきた。ある日、社長を救ってくれたカウンセラー・三角に出会い、強迫性障害の治療を受けることになる。三角が提示したのは、恐怖を段階的に克服していく「曝露療法」。十段階のステップを踏むことで、黒瀬は少しずつ、他者との接触に向き合っていく……。
宝井理人の本作は、心の病を扱いながら決して説教臭くならない稀有なBL作品だ。『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』の谷川ニコとは対照的に、宝井は心理描写を丁寧な内省で紡ぐ。黒瀬の強迫観念がもたらす苦痛は、コマ割りと余白の使い方で視覚化される。治療という名目で交わされる二人の距離の変化が、医療行為なのか感情の発露なのか、その曖昧な境界線上で物語は進行する。DEAR+での連載時から話題を呼んだのは、この「触れる/触れられる」という行為に付与された多層的な意味ゆえだろう。プロとクライアントという関係性が孕む倫理的緊張を、宝井は逃げずに描き切った。
心の傷を抱えた者同士が、互いの境界線を探りながら近づいていく過程を、これほど繊細に描いた作品はそうない。触れることの意味を、あなた自身の手で確かめてください。