『熱帯魚は雪に焦がれる』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ
この作品について
東京から南の島へ転校してきた小雪は、水族館で出会った同級生・小春に誘われ、水族館部に入部する。人付き合いが苦手で、自分の殻に閉じこもってきた小雪。対照的に、明るく無邪気で、水族館の生き物たちを心から愛する小春。二人の距離は、水槽の向こう側で静かに泳ぐ魚たちを眺めるように、ゆっくりと縮まっていく。
作者の萩埜まことは『citrus』で百合ジャンルに新風を吹き込んだが、本作では一転して、静謐で繊細な筆致を選んだ。『citrus』が激情と葛藤のドラマだとすれば、こちらは観察と共感の物語です。小雪の内面描写は丁寧で、他者との距離の取り方に悩む思春期の機微が、説明的にならず表情と仕草だけで伝わってくる。小春というキャラクターの造形も見事だ。彼女は単なる「明るい子」ではなく、生き物への純粋な愛情を持ち、それが小雪の心を開く鍵になる。水族館という舞台設定も効いている。光と影、透明な水槽越しの視線、静かな空間——すべてが二人の関係性のメタファーとして機能します。
百合作品としての完成度はもちろん、成長物語としても一級品です。未読ならば、ぜひこの透明な世界に触れてみてください。