『社畜サキュバスの話』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ
この作品について
夢魔リリィは、人間の精気を吸って生きるサキュバスだ。だが彼女が選んだのは、人間界の会社に就職し、サラリーマンとして働く道。定時退社を夢見ながら残業に追われ、上司に気を遣い、同僚との飲み会をこなす日々。本来なら夜な夜な男を誘惑するはずの種族が、なぜ満員電車に揺られ、エクセルと格闘しているのか……。
著者・天野しゅにんたは『お兄ちゃんはおしまい!』で性転換コメディの新境地を開いた作家だが、本作では「ファンタジー種族×現代社会」という切り口で、労働のリアルを描き出している。サキュバスという設定が単なるギャグの皮ではなく、むしろ「本来の役割を放棄して社会に適応しようとする存在」として機能しているのが巧妙だ。リリィが精気を吸わずに働くのは、人間社会に馴染みたいという願望の裏返しであり、それゆえに彼女の疲弊はどこまでも切実である。飲み会で上司の愚痴を聞き流し、書類整理に追われ、有給を取れずに溜息をつく姿は、読者自身の日常と重なる。コメディでありながら、労働への皮肉がじんわりと効いている。
社畜という言葉が軽口ではなくなった今だからこそ、この作品は刺さります。リリィの奮闘に笑いつつ、自分の働き方をふと見つめ直してしまう。そんな一冊です。