『ヴァニタスの手記』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ
この作品について
19世紀末、スチームパンク的な技術革新が進むパリ。吸血鬼が実在するこの世界で、人間の医師ヴァニタスは「ヴァニタスの書」と呼ばれる呪いの魔導書を手に、「真の名」を歪められ理性を失った吸血鬼たちを治療して回っている。吸血鬼の青年ノエは、彼と出会ったことで奇妙な旅に巻き込まれていく……。
『PandoraHearts』で複雑な伏線と謎を張り巡らせた物語世界を構築した望月淳の新作である。前作で培われた緻密な設定構築力はそのままに、今作ではゴシック・ホラーとスチームパンクを融合させた独自の吸血鬼像を提示する。特筆すべきは「治療」という切り口だ。吸血鬼を退治するのではなく、呪いを解いて救う——この逆転の発想が、ジャンルに新鮮な風を吹き込んでいる。ヴァニタスとノエ、二人の主人公の対照的な人物造形も秀逸です。飄々とした仮面の裏に影を抱えるヴァニタスと、生真面目で不器用なノエ。この凸凹コンビのやり取りが物語に軽妙さを与えつつ、徐々に明かされる過去の断片が読者を物語の深層へと誘う。
『月刊ガンガンJOKER』連載作として、少年誌の枠を超えた重層的な物語が展開されています。吸血鬼ものの新定番を求めるなら、今すぐ手に取るべき一作です。
まだ読んでいないあなたへ
吸血鬼が「病気」として描かれる物語があるんです。
19世紀パリ、スチームパンク風の街に現れたのは、人間の青年ノエと名乗る謎の医師ヴァニタス。彼が持つのは「ヴァニタスの書」という青い本。この本は、呪いに蝕まれた吸血鬼を「治療」する力を持っているんですが、ヴァニタス本人は人間なんです。吸血鬼でもないのに吸血鬼を救う男。この設定だけで引き込まれませんか。
何より凄いのは、キャラクター同士の距離感なんですよ。ヴァニタスとノエは最初から仲良しでも敵対でもない。互いに警戒しながら、ときに利用し合い、ときに救い合う。この微妙な距離が縮まったり離れたりする過程が、恐ろしく繊細に描かれていて、ページをめくる手が止まらないんです。
そして絵が、圧倒的に美しい。19世紀の衣装や街並みの描き込み、キャラクターの表情の機微、アクションシーンの躍動感。望月淳先生の画力が全編を通して炸裂していて、1コマ1コマが映画のワンシーンのように決まっているんです。
物語が進むにつれ、明かされていく登場人物たちの過去。その重さと痛みが、現在の彼らの行動や関係性に複雑な影を落としていく構成も見事で。誰が正しくて誰が間違っているとは言い切れない。全員が何かを背負っていて、全員が必死に生きている。
吸血鬼ものなのに、ここまで人間臭い作品は珍しいんですよ。ダークファンタジーでありながら、根底にあるのは「救済」なんです。読み終わった後、胸がじんと熱くなる感覚が残る。これ、体験してほしいんです。