『陰の実力者になりたくて!』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ
この作品について
平凡なサラリーマンが事故死し、剣と魔法の異世界に転生した。前世で「モブに擬態しながら陰で世界を救う最強者」に憧れていた彼は、貴族の三男シド・カゲノーとして生まれ変わり、ついに理想の「陰の実力者」ごっこを始める。彼が妄想で作り上げた邪悪な組織「ディアボロス教団」、それと戦う秘密結社「シャドウガーデン」。すべては空想の産物だったはずが——実は教団も陰謀も本当に存在していた……。
作者・逢沢大介は本作がデビュー作となる新人だが、なろう系異世界転生ものの文法を完全に理解した上で、その構造そのものをギャグに昇華させている点が卓越している。多くの異世界転生作品が「最強主人公が活躍する爽快感」を目的とするのに対し、本作は主人公の認識と現実のズレそのものをエンジンにする。シドは自分が演じる「陰の実力者」像に陶酔しているだけで、世界の真実には興味がない。だが彼の妄想じみた言動が偶然すべて的中し、周囲は彼を「すべてを見通す天才」と崇める。この多重の勘違いが生む喜劇性は、『ワンパンマン』のサイタマが持つ「強すぎるゆえの無感動」とも、『この素晴らしい世界に祝福を!』のカズマが持つ「ツッコミ役の苦労」とも異なる。シドは最初から最後まで自分の妄想世界に生きており、その一貫した狂気が作品の核になっています。
厨二病全開の妄想が世界を救う。この倒錯した構造を笑いながら読めるなら、これ以上の娯楽はありません。
まだ読んでいないあなたへ
主人公が「本気で」影の支配者になりたいって夢見てる漫画なんです。
ここ、めちゃくちゃ重要で。普通、主人公って正義のヒーローになりたいとか、最強になりたいとか言うじゃないですか。でもこの主人公シド・カゲノーは違う。表舞台には絶対立たない、誰も自分の正体を知らない、でも世界の命運を裏で握ってる──そういう存在に心の底から憧れてるんです。子どもの頃から本気で。
で、異世界転生するんですけど、そこで適当に作った「世界を裏で操る悪の組織ディアボロス教団」っていう設定が、実は本当に存在してたんですよ。自分では「全部妄想の延長」って思い込んで大立ち回りしてるのに、周りからは「全てを見通した影の支配者」として崇められてる。この恐ろしいまでのズレが、もう笑えるし痛快なんです。
シドが何気なく吐いたカッコつけた一言を、仲間たちが「やはり様は全てご存知だったのか…!」って真剣に受け止めて、勝手に世界規模の陰謀を暴いていく。本人は「よし、今日も完璧に影の実力者してる」って満足してる。このすれ違いの連鎖が、どこまでいっても破綻しないんです。
バトルシーンの絵も凄い。シドが「影の実力者らしく」キメようとする時の演出が、無駄にカッコいい。本人の中二病的こだわりが、圧倒的な実力と合わさって、笑えるのに普通に熱いっていう奇跡みたいな瞬間を生むんですよ。
真面目に世界を救おうとしてる人たちと、真面目に影の実力者ごっこしてる主人公が、結果的に同じ敵と戦ってる。この構図、読んでるうちにクセになるんです。読み終わったあと、絶対誰かに話したくなりますよ。