BEASTARS』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ

この作品について

肉食獣と草食獣が共存する世界の全寮制高校チェリートン学園。演劇部に所属する灰色狼の少年レゴシは、ある夜、アルパカの生徒が何者かに食い殺される事件に遭遇する。肉食の本能を抑えて生きてきたレゴシだが、小柄なウサギの少女ハルと出会い、彼女に惹かれるほど、自身の中に眠る「食いたい」という衝動が目覚めていく。これは恋なのか、それとも捕食欲なのか……。

作者の板垣巴留は『刃牙』シリーズで知られる板垣恵介の娘だが、父親譲りの暴力描写の生々しさを持ちながらも、その筆致はまったく異なる。本作が秀逸なのは、「肉食と草食」という設定を単なる記号に終わらせず、マイノリティの葛藤、性衝動と暴力性の地続き、社会システムの欺瞞といった多層的なテーマに昇華させた点です。少年誌でありながら、種族間の恋愛や肉の闇市場といった要素を通じて、差別や欲望の本質を抉り出していく。レゴシの繊細な心理描写と、彼を取り巻くキャラクターたちの生々しい欲望が交錯し、読むほどに「この世界のルールとは何か」を問い直さずにはいられなくなる。週刊少年チャンピオンという枠を超えて評価され、第21回手塚治虫文化賞を受賞したのも当然でしょう。

『動物のお医者さん』のようなコメディではなく、『寄生獣』のように人間性の根幹を揺さぶる作品です。未読ならば、今すぐ手に取るべきでしょう。

まだ読んでいないあなたへ

肉食獣と草食獣が共存する世界。

この設定だけ聞くと、よくある寓話かと思うじゃないですか。

違うんです。ハイイロオオカミの高校生レゴシが、ドワーフウサギの少女ハルに恋をする。ただそれだけの話が、これほど胸を締め付けるなんて。彼が彼女の前で必死に本能を抑え込む姿を見ていると、初恋の記憶が痛いほど蘇ってくるんですよ。好きな人の前で「普通」でいることの難しさ、相手を傷つけるかもしれない恐怖、それでも触れたいと願う気持ち。全部、私たちが経験してきた感情なんです。

学園で起きた食殺事件。犯人探しというミステリの構造を持ちながら、この物語が本当に描くのは「違う者同士が分かり合えるのか」という問いです。レゴシは自分の牙と向き合い、ハルは弱者として生きる意味を問い、シシ組のボス・ルイは誰にも言えない秘密を抱えている。動物の姿をしているからこそ、人間社会の本質が見えてくる構造が見事なんです。

驚くのが絵の力。板垣巴留先生の線は荒々しくて、時に不安定で、でもそれがキャラクターの感情を直接伝えてくるんです。レゴシの目に宿る優しさと野生、ハルの小さな体に秘められた強さ、ルイの美しい角に隠された脆さ。一コマ一コマから、彼らの息遣いが聞こえてくる。

「君を食べたい」という衝動と「君を守りたい」という願いが同居する矛盾。その葛藤の中で、レゴシは本当の強さを探していくんです。

22巻で完結。誰もが抱える「本能」と「理性」の物語を、今夜読み始めてください。

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