アオハライド』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ

この作品について

中学時代、クラスメイトの田中くんに惹かれていた吉岡双葉。だが彼女は周囲から浮かないよう「女の子らしさ」を封印し、わざと男勝りに振る舞っていた。そんな偽りの自分のまま迎えた夏祭りの日、田中くんとの約束は果たされないまま終わる。彼は転校し、双葉の初恋も未完のまま高校生へ。ところが再会した「田中くん」は、名前も性格も別人のように変わっていた……。

咲坂伊緒が『ストロボ・エッジ』に続いて描く本作は、少女漫画の定番である"再会もの"を、喪失と再生の物語へと深化させている。単なる初恋の続きではない。中学時代の双葉は、周囲に合わせて本当の自分を隠していた。田中くん——いや、馬渕洸は、そんな彼女の「素」を見抜いてくれた唯一の存在だった。だからこそ再会後、名前も性格も変わり果てた彼の姿は、双葉にとって喪失そのものだ。この作品が巧みなのは、失われた過去を取り戻すのではなく、変わってしまった二人がもう一度関係を築き直す過程を描く点にある。咲坂伊緒の真骨頂である繊細な心理描写は健在で、登場人物たちの表情一つ一つが雄弁に語りかけてくる。

青春の輝きと残酷さを同時に味わいたいなら、この作品以上の選択肢はありません。

まだ読んでいないあなたへ

初恋は、終わらせ方を間違えると一生引きずるんです。

双葉は中学時代、田中くんに恋をしていました。でも、告白する約束の日、彼は来なかった。転校してしまった。それから3年。高校で再会した彼は、苗字も性格も別人のように変わっていて、双葉の知っている優しい田中くんはどこにもいないんです。冷たい目、突き放すような態度。何があったのか、彼は何も話してくれない。

この作品が突き刺さるのは、登場人物全員が「完璧じゃない自分」と向き合わされるからなんですよ。双葉は周りに合わせて明るく振る舞う自分に疲れてる。洸(田中くん)は過去のトラウマで人を遠ざけることしかできない。そして彼らの周りにいる仲間たちも、それぞれ誰にも言えない傷を抱えてるんです。

読んでいて苦しくなる場面が何度もあります。好きなのに素直になれない。言葉にすれば届くはずなのに、怖くて言えない。誰かを好きになることで、自分の弱さや醜さが全部あぶり出されていく。でもだからこそ、彼らが一歩踏み出す瞬間の輝きが、これ以上ないほど眩しいんです。

咲坂伊緒先生の絵は、表情の機微がえぐいほど繊細で、セリフのないコマが心をかき乱してきます。雨の描写、光の使い方、キャラクターの目の演出。全てが感情を増幅させるために計算されている。

恋愛漫画の傑作と呼ばれる理由が、読めば分かります。青春って、こんなに不器用で、痛くて、それでも捨てられないものだったんだと思い出させてくれる作品です。

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