『惡の華』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ
この作品について
中学生の春日高男は、ボードレールを愛読する文学少年でありながら、クラスの美少女・佐伯奈々子に密かな憧れを抱いている。ある日の放課後、魔が差した彼は教室に忘れられていた佐伯の体操着を盗んでしまう。だが、その決定的な瞬間を、クラスで最も近寄りがたい存在である仲村佐和に目撃されていた……。
押見修造の初期代表作である本作は、『ハピネス』や『血の轍』へと連なる"思春期の闇"を描く系譜の出発点だ。少年の内面に巣食う欲望と自己嫌悪、それを暴き立てる少女の狂気が、読む者の胸をえぐる。ここには美化された青春など一切ない。あるのは、思春期特有の万能感と劣等感が入り混じった、生々しい痛みだけである。仲村佐和というキャラクターの造形は圧倒的で、彼女の存在が物語を単なる犯罪譚から、抜け出せない悪夢のような心理劇へと変貌させている。
この作品を読まずして、2010年代以降の"心理スリラー系青春漫画"は語れません。あなたが思春期に感じた後ろめたさ、それがどこまで残酷な形で具現化されうるか、その答えがここにあります。
まだ読んでいないあなたへ
中学生の春日、押見修造が描いたこの主人公ほど、読者の胸をかきむしる存在はいないんです。
クラスの女子・佐伯の体操着を、魔が差して盗んでしまった。たったそれだけのこと。でもその現場を、教室の隅で誰にも気づかれずに生きていた仲村に見られていた。彼女は春日を脅迫し、奇妙な「契約」を結ばせるんです。そこから始まる日常の崩壊が、もう尋常じゃない。
この作品、綺麗な青春なんて一ミリも描かれません。思春期の歪んだ性衝動、誰にも言えない罪悪感、自分が何者かわからない焦燥、他人を傷つけることでしか自分を感じられない衝動。そういう10代の膿を全部抉り出して、容赦なく突きつけてくるんです。読んでいて息が詰まる。でも目が離せない。
仲村佐和というキャラクターの造形が圧倒的なんですよ。彼女は狂っているけど、なぜ狂わざるを得なかったのか、その理由が後半で少しずつ明かされていく過程で、読者の心は引き裂かれます。春日も佐伯も仲村も、誰一人として「悪役」じゃないんです。みんな必死で、不器用で、痛々しい。
押見修造の絵は独特です。美化しない。むしろ醜く、生々しく描く。でもその線に宿る感情の振れ幅が尋常じゃなくて、読後はしばらく放心状態になります。
あなたの中にある、見ないふりをしてきた暗部。この作品は容赦なくそこを照らしてくるんです。