お金がないっ』の最新刊・次巻発売日・全巻情報まとめ

この作品について

美大生の雪野遥人は、ある日突然一億五千万の借金を背負わされる。親の保証人に無断で名を連ねられていたのだ。追い詰められた遥人は、金融会社御曹司の綾瀬に「四年間、俺のペットになれ」と身体を差し出す契約を結ばされることになる。金のない大学生と、金と権力を持つ男。この圧倒的な格差のもとで始まった関係は、いったいどこへ向かうのか……。

香坂透といえば、過激な設定と濃密な心理描写で多くの読者を魅了してきた作家だが、本作『お金がないっ』は彼女の代表作といっていい。1990年代後半から2000年代初頭にかけて幻冬舎コミックスのビーボーイゴールドで連載された本作は、いわゆる「ゴージャス系」と呼ばれるBLの金字塔である。圧倒的な財力差という設定は、当時のBL作品でありがちなパターンではあった。しかし本作が優れているのは、その力関係がただの背景装置で終わらず、遥人の誇りや自立心と綾瀬の独占欲が激しくぶつかり合う物語の芯になっている点だ。綾瀬は冷酷なドSかと思いきや、遥人への執着が暴走するたびに脆さを見せる。この揺らぎが読者を惹きつける。華やかな画面と重たいテーマのバランスも絶妙で、香坂作品ならではの読み応えがある。

ドラマCDや実写映画化もされた本作は、今なおBLファンの間で語り継がれています。未読ならこの機会にぜひ。

まだ読んでいないあなたへ

借金肩代わりの代償が、身体だったんです。

大学生の雪平綾瀬は、いとこの借金返済のため、闇金融の社長・狩野に買われてしまう。最初は純粋に身体だけの関係のはずが、狩野の不器用すぎる優しさに、綾瀬の心が少しずつ揺れていくんですよ。この「揺れ」の描き方が尋常じゃなく丁寧で、読んでいるこっちまで息が詰まる。

狩野という男がまた厄介で。圧倒的な財力と威圧感を持ちながら、綾瀬の前では時折見せる戸惑いや、言葉にできない想いが滲み出る瞬間がある。その落差に、気づけば綾瀬と同じ視点で彼を見つめている自分がいるんです。

香坂透の絵は美しいだけじゃなくて、表情の機微が恐ろしいほど雄弁なんですよ。言葉では拒絶していても、目が、指先が、別のことを語っている。そのコントラストが胸に刺さる。

12巻かけて二人の関係が変化していく過程は、決して甘いだけじゃない。社会的立場、年齢差、そして何より最初の出会い方という壁が、常に二人の間に横たわっている。それでも惹かれ合ってしまう人間の業を、この作品は容赦なく描き切るんです。

BL黎明期の金字塔と呼ばれる理由、読めば分かります。

巻一覧(発売順)